マンガ暴食日記

好き勝手に、新旧のマンガを紹介しています

永遠の0

 今日の紹介は「永遠の0」。説明の必要は無いと思いますが、原作は 百田尚樹 による小説で、岡田准一 主演の映画も話題になりました。紹介するのは、須本壮一 によるコミカライズ版。2010年より、漫画アクションで連載され、全5巻の作品となっています。須本壮一 は、同じく 百田尚樹 の小説の「海賊とよばれた男」のコミカライズ版も書いていますが、個人的には、「永遠の0」の方が断然面白いと思っています。



 主人公は、司法浪人中の 佐伯健太郎。浪人と言っても、司法試験への情熱を失ってる所だったのですが、姉の頼みにより、特攻隊で死んだと言う祖父の調査を手伝う事になりました。祖母は既に亡くなり、主人公達は祖父の事は何も知らなかったのですが、戦友会をなどを頼りに、生前の祖父の事を知る人の話を聞きに行くと言うストーリーです。元戦友から聞く話しは、主に戦場での祖父の姿で、読者は、主人公と共に、太平洋戦争を追体験していきます。


 Wikipedia によると、原作小説の累計販売部数は、2014年の時点で500万部を超えると言う、歴史的な大ヒット作です。今更、この魅力を書く必要は無いかとも思いますが、太平洋戦争を舞台にした小説として、傑作の一つでしょう。戦争ものにアレルギーがある人も多いと思いますが、「永遠の0」は中立に書かれていると感じさせてくれるので、読みやすいと思います。戦争の悲惨さを書きつつも、そこで戦う兵士の心情もきちんと書いています。また、兵器・補給の面などから、日本が勝てる見込みが無かったとも冷静に書き、「あと少しで日本が勝てた」などの妙な美化もほとんどありません。多くの人が受け入れやすい内容でしょう。
 もちろんストーリーも素晴らしいです。戦争を知らない世代に、色々な思いを訴えながら、徐々に祖父の人物像が明らかになった後、終盤には見事な仕掛けにより、読者を驚かせてくれます。何度も読みたくなる話だと思います。


 原作に比べ、マンガ版の方は知名度が低いですが、なかなか良いできだと思います。多少の改変はあるものの、全体的には原作に忠実に書かれています。もちろん省略されている所などもありますが、代わりに戦争の描写は、小説にはできない迫力があります。


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 戦争映画を見慣れているような方でなければ、このマンガ版の方が、小説よりも状況を理解できるでしょう。既に小説を読んでいる方が、具体的な情景を知るために読むのも良いと思います。映画やドラマにもなった本作ですが、このマンガが、一番手軽に、そして十分に「永遠の0」を楽しめると思います。
 全5巻と、短すぎず長すぎない、適度なボリュームですし、原作を未読の方にも既読の方にもお勧めです。