マンガ暴食日記

好き勝手に、新旧のマンガを紹介しています

ゆうべはお楽しみでしたね

 年も明けたので、また更新できるか再挑戦。今日は、金田一蓮十郎 の「ゆうべはお楽しみでしたね」を紹介します。本田翼&岡山天音による実写ドラマが始まった所なので、そのニュースで知った方も多いでしょう。2014年より、「ヤングガンガン」「ガンガンONLINE」で連載が始まったラブコメです。


 主人公は、ゲーム好きで人付き合い(特に女性)の苦手なフリーター、さつきたくみ。祖父所有の家に一人で暮らしていたのですが、オンラインRPGの「ドラクエX」で知り合ったプレイヤーに空き部屋を貸し、一緒に住むことになりました。相手は「ドラクエX」では親しいものの、リアルで会った事は無く、引っ越しの時が初対面。
 そして待ち合わせ場所にいたのは、いかにもギャルな女性の、おかもとみやこ。お互いに相手の性別を誤解したまま、一緒に住む事にしていたのでした。最初は主人公は引っ越しを断ろうとしたものの、彼女に押し切られるような形で、同居する事になったと言うラブコメです。


 「ラブコメ」と書いたものの、一般的なラブコメとは、随分と雰囲気が違います。まず、このマンガの半分は「ドラクエX」のエピソードでできています。ゲームの宣伝マンガとも言えるでしょう。と言っても、いかに「ドラクエX」が楽しいかではなく、いかに主人公が「ドラクエX」を楽しんでいるか、と言う視点で書いているので、読んでて宣伝臭くはありません。ゲーム好きの人なら、素直に楽しめるでしょう。マンガを読んでると、自然と「ドラクエX」をやりたくなると思います。
 そしてゲーム以外の部分ですが…性別を知らずに同居する事になった事を除けば、わりと現実的なストーリーです。突然の幼馴染登場とか、ラッキースケベとか、少年マンガのラブコメにありがちな露骨なエピソードは少なく、主人公とヒロインの自然な仲の進展を楽しめます。
 逆に欠点として、話が淡泊な所があります。同じ屋根の下、二人で暮らしているのに、特別なエピソードが無さ過ぎて、同居している感じがあまりありません。同居と言うより、アパートの隣同士と言う雰囲気です。巻が進むにつれ、二人の仲も進展するのですが…その割に、具体的に二人の仲が進んだエピソードが無くて、物足りない所があります。ここは、ドラマでは改善されていると良いのですが、どうでしょうか…。
 そんな訳で、ゲームが好きで、(ギャグじゃない)大人しめのラブストーリーが楽しめる方にお勧めです。


 ドラマを見てもらっても良いのですが、2月7日まで読めるお試し版として、第1巻が無料公開されています。


ゆうべはお楽しみでしたね 1巻【期間限定 無料お試し版】

旅ボン

 今日は、イラストレーターの ボンボヤージュ による、旅行エッセイ「旅ボン」シリーズを紹介。2005年から、ムックに連載され、その後は書下ろしで単行本化されていて、現在までに6冊が発売されています。



 ボンボヤージュは、ちびギャラで人気となったイラストレーターです。出版社の問題などで、最近は以前程は見かけなくなりましたが、今でもグッズなど定期的に販売しています。



 「旅ボン」は、そんな作者によるエッセイ本です。作者が編集者などの出版関係者とどこかにでかけ、その時の出来事をコミック化したものです。
 ちなみに、フランス語の Bon Voyage(ボン・ボヤージュ)は、「良い旅を」と言う意味ですが、本人は出不精の引きこもりです。つまり、旅行嫌いの作者による、旅行エッセイコミックとなっています。


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 こんな感じで、作者のモチベーションは低いのですが、シリーズは人気で続いています。


シリーズ

  • 新 旅ボン イタリア編
  • 新 旅ボン 富士山編(中編4作)
  • 新 旅ボン 北海道編
  • 旅ボン 沖縄編
  • 旅ボン ハワイ編
  • 旅ボン 大阪編

 (「新 旅ボン」となっているのは、出版社移籍により、増補改題版となったもの)


 魅力は、何といっても、旅行エッセイっぽく無い事。旅行先で名所巡りはしますが、一般的な旅行エッセイとは目の付け所が違います。


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 そして、ネタやトラブルも豊富。第一弾のイタリア編は、わりと順調ですが、第二弾の富士山編では、最初からバスに乗り遅れています。定番のものを食べて、美味しさに笑顔になる事もあれば、微妙なものを食べて、渋い顔になる事も珍しくありません。旅行エッセイって、普通は旅先の良さをアピールするものですが、作者にそんな気は無く、自分の思うがままを書いているように思えす。
 旅行エッセイと言う体裁ですが、旅行の内容ではなく、作者ボンボヤージュの言動を楽しむマンガでしょう。個性的な感性や、旅行ならではの(あるいは旅行と関係な無い)様々なエピソードは、他の旅行エッセイには無い面白さがあります。私は特に「イタリア編」「富士山編」がお気に入り。旅行の面白さと、ネタエピソードのバランスが、ちょうど良い感じです。


 人によって、好き嫌いがあるマンガですが、ちびギャラが可愛いと思う方は、チェックしてみて下さい。

永遠の0

 今日の紹介は「永遠の0」。説明の必要は無いと思いますが、原作は 百田尚樹 による小説で、岡田准一 主演の映画も話題になりました。紹介するのは、須本壮一 によるコミカライズ版。2010年より、漫画アクションで連載され、全5巻の作品となっています。須本壮一 は、同じく 百田尚樹 の小説の「海賊とよばれた男」のコミカライズ版も書いていますが、個人的には、「永遠の0」の方が断然面白いと思っています。



 主人公は、司法浪人中の 佐伯健太郎。浪人と言っても、司法試験への情熱を失ってる所だったのですが、姉の頼みにより、特攻隊で死んだと言う祖父の調査を手伝う事になりました。祖母は既に亡くなり、主人公達は祖父の事は何も知らなかったのですが、戦友会をなどを頼りに、生前の祖父の事を知る人の話を聞きに行くと言うストーリーです。元戦友から聞く話しは、主に戦場での祖父の姿で、読者は、主人公と共に、太平洋戦争を追体験していきます。


 Wikipedia によると、原作小説の累計販売部数は、2014年の時点で500万部を超えると言う、歴史的な大ヒット作です。今更、この魅力を書く必要は無いかとも思いますが、太平洋戦争を舞台にした小説として、傑作の一つでしょう。戦争ものにアレルギーがある人も多いと思いますが、「永遠の0」は中立に書かれていると感じさせてくれるので、読みやすいと思います。戦争の悲惨さを書きつつも、そこで戦う兵士の心情もきちんと書いています。また、兵器・補給の面などから、日本が勝てる見込みが無かったとも冷静に書き、「あと少しで日本が勝てた」などの妙な美化もほとんどありません。多くの人が受け入れやすい内容でしょう。
 もちろんストーリーも素晴らしいです。戦争を知らない世代に、色々な思いを訴えながら、徐々に祖父の人物像が明らかになった後、終盤には見事な仕掛けにより、読者を驚かせてくれます。何度も読みたくなる話だと思います。


 原作に比べ、マンガ版の方は知名度が低いですが、なかなか良いできだと思います。多少の改変はあるものの、全体的には原作に忠実に書かれています。もちろん省略されている所などもありますが、代わりに戦争の描写は、小説にはできない迫力があります。


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 戦争映画を見慣れているような方でなければ、このマンガ版の方が、小説よりも状況を理解できるでしょう。既に小説を読んでいる方が、具体的な情景を知るために読むのも良いと思います。映画やドラマにもなった本作ですが、このマンガが、一番手軽に、そして十分に「永遠の0」を楽しめると思います。
 全5巻と、短すぎず長すぎない、適度なボリュームですし、原作を未読の方にも既読の方にもお勧めです。

地獄楽

 仕事忙しい時に、ブログ始めたのは失敗だったかと思いつつ、無理せず書ける時に書いてます。
 今日は、賀来ゆうじ によるダークファンタジー、「地獄楽」を紹介。今年の1月から、少年ジャンプの Web マガジン、「少年ジャンプ+」に掲載されている作品で、2日に第4巻が発売になりました。Web 公開の作品なので知名度が低い様に感じていますが、「少年ジャンプ+」の注目ランキングでは上位常連の作品で、今日3日から一週間、マンガサロン「トリガー」で原画展も開催されています。


 徳川家第十一代征夷大将軍が治める時代、幕府に捕らえられた主人公の 画眉丸 は、無罪放免の報酬の為、謎の島で不老不死の仙薬を探す旅に参加します。しかし、そこは人外魔境の地。画眉丸 は同じくその島に送られた死罪人達と、時には殺し合い、時には共闘しながら、島の謎と仙薬を追う物語です。
 主人公は火刑でも牛裂きでも釜茹ででも死なない程、化け物のような強さを誇りますが、島に送られたのは、それに負けない腕前の者達で、更に島にいるのは文字通りの化け物。人外の強さの者同士の戦いは爽快です。バトルだけでなく、ストーリーも秀逸で、島の謎や主人公達の人間関係など、気になる要素が尽きません。
 残虐なシーンや軽く性的な描写があるので、少年ジャンプ本誌での連載は厳しいかもしれませんが、Web での連載と言うのが勿体無いレベルの作品です。原画展が開催されただけでなく、売り場でピックアップしている本屋も多数あるなど、評価も高いです。知らない人がいたら、是非この機会に読んでみて欲しいです。


 現在、11月16日まで読めるお試し版として、第1巻が無料公開されています。1巻は、島の探索を始めた所までで、本領発揮はこれからですが、面白さは十分伝わるでしょう。未読の方は、こちらから是非。


地獄楽【期間限定無料】 1

二月の勝者 ―絶対合格の教室―

 今日は、高瀬志帆による、中学受験を舞台にしたマンガ、「二月の勝者 ―絶対合格の教室―」を紹介。2017年12月に「ビッグコミックスピリッツ」で連載が始まり、19日には最新の3巻が発売になりました。


 主人公は、中学受験対策塾「桜花ゼミナール」に講師として就職した、佐倉麻衣。吉祥寺校に着任したのですが、ここは昨年度の成績が悪く、校長が左遷されていました。そして新しい校長が、圧倒的な合格者数を誇るライバル塾「フェニックス」のエース講師だった、黒木蔵人。彼ら二人を中心に、今の中学受験のリアルな姿が描かれていきます。
 中学受験って、私が子供の時は、裕福な家庭がやるようなイメージだったのですが、時代と共に環境が変わり、決して特別なものではなくなってきました。そんな中学受験の状況や塾の仕組みなどを、読者の代弁者でもある、主人公の新米講師と共に学べるマンガです。小学生のお子さんがいるような方は、きちんと中学受験について考える機会があると思いますが、そうでない人にとって、手軽に社会勉強ができます。中学受験に興味の無い人程、読むメリットがあるでしょう。


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 マンガとしては、新校長の 黒木蔵人 が見所。試験の簡単な心得から、退塾を考えている家族の説得まで、様々な所で手腕を発揮していきます。生徒の事を、お金を入れるお客さんと呼ぶなど、超合理的な発言を繰り返しつつも、きちんと一人一人の事を見ている姿も魅力です。そして、まだ明かされない秘密があり、今後の物語に期待を持たせてくれます。
 最新の3巻では、夏休みに入る所まで時間が進みます。受験本番までは時間があり、あまり山場はありませんが、今まであまり語られなかった先生にスポットが当たったり、今後の波乱の元になるようなシーンが、幾つか出てきました。派手なマンガではないのですが、今後が気になるストーリーが続いています。
 社会勉強ができ、それでいて楽しめるマンガとして、お勧めです。

C.M.B. 森羅博物館の事件目録

  今日は、加藤元浩によるミステリーマンガ、「C.M.B. 森羅博物館の事件目録」を紹介。2005年に「月刊少年マガジン」で連載が始まって、現在も好評連載中の長寿作で、17日には最新の39巻が発売になりました。


 加藤元浩による推理マンガと言うと、「Q.E.D. 証明終了」が有名ですが、私はこちらの方がお気に入り。大英博物館の三賢者全員から一番弟子と認められた少年、榊森羅と、合気道の達人でワトソン役の女子高生、七瀬立樹 のコンビが、様々な事件を解決していく話です。
 特徴は、主人公が小さな私設博物館の館長と言う事。アステカのレリーフグーテンベルクの聖書など、様々な貴重な品が関わる事件が多いです。また事件が起こるのが、近所の事もあれば、バチカン、マレーシア、エジプトなど、世界各地へ行くこともあります。このバラエティー豊かな舞台が魅力の一つです。
 そしてこれらの舞台について、きちんと考察もされています。例えばバチカンを舞台にした話は、ちょっとした歴史ロマンとしても、十分に楽しめます。少年が博物館の館長と言う設定はマンガ的ですが、その知識・考察に納得行くところが多く、設定を素直に受け入れられます。
 ちなみに「Q.E.D. 証明終了」とは同じ世界で、登場人物の血縁関係や、クロスオーバーのエピソードもあります。


 17日現在、1巻~5巻をまとめた、「超合本版 1巻」が無料となっています。是非、読んでみて下さい。

 少年マンガなので、読みやすく、5巻分でもあっさり読み終わると思います。最初は作品の方向性が定まっていない感じもありますが、3巻くらいから、ぐっと面白くなります。毎回、テンプレートみたいな殺人事件が起こるミステリーより、ずっと良い作品だと思います。

青武高校あおぞら弓道部

 今日は、15日に2巻が発売となった、「青武高校あおぞら弓道部」を紹介。嵐田佐和子 による弓道を題材にしたマンガで、2016年の10月より、「ハルタ」にて連載されています。

 主人公の天草和馬は、アメリカで弓道を学んだのですが、進学した日本の高校には弓道部が無く、一人頭の中で弓を引く日々を送っていました。ところが、そこで弓道経験のある教師と出会った事で、高校で本格的に弓道を行っていく事になります。
 話が進むにつれ、主人公の姿に憧れて弓道を始める少女、将来のライバルと思われる同じ年の少年、一度は弓道から離れた経験者などが登場し、彼らの弓道への取り組みが描かれていきます。


 ぶっちゃけ、ストーリーは地味。弓道と言う競技自体、試合内容や練習方法が限られていて、内容にバラエティーを出す事が難しいと思います。しかし、それ以上に、キャラクターが大人しく、あまり華を感じさせません。でも、このマンガは、それが良いんです。主人公が天才的な才能で活躍する姿ではなく、地道な活動による成長する姿を楽しめます。
 2巻では、わりと王道的なストーリーで弓道仲間が増え、タイトル通り弓道部に近づくのですが…それよりも、主人公や初心者の女の子が、初めて弓を持つシーンに私は惹かれました。そんな静かなシーンも楽しめる人は、このマンガが合うと思います。


 ただ残念なのが、刊行ペースが遅い事。単行本で言うと、一年に1冊なのです。じっくり、気長に、弓道と付き合う気がある方におすすめです。